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PCCの目的と活動方針

初めまして。本コンソーシアム「ポイントクラウドコンソーシアム(PCC:Point Cloud Consortium)」 の林昌希と申します。 私の初めてのブログ投稿となる本記事では、まず本コンソーシアム全体の紹介として、以下の2つの記事に分けて書かせて頂きます。
 (1)「コンソーシアムの目的と活動方針」(今回の記事)
 (2)「デプスセンサーやPoint Cloud処理の近未来」(次回の記事)
本記事では、まず(1)について書かせていただき、次の記事で(2)について紹介する予定です。
それではさっそく(1)について紹介していきます。


Point Cloud コンソーシアムの目的と活動方針

我々「Point Cloud コンソーシアム」は、Microsoft社のKinectをはじめとした「コンシューマ向けのデプスセンサー」の登場により、その取得が容易になった「実世界から計測した色付きの点群データ(RBG-Dデータ)」のビジネス活用を推進していくことを目的にした組織です。また、安価なデプスセンサーに限らず、「実セカイから取得した点群の活用全般」に焦点をあてて行きます。
この目的のもとで、まずは以下のような活動を行っていく予定です。
  •  ・Webサイトを通しての、技術情報の発信。(Point Cloud Libraryによる点群処理、3Dデータの可視化など)
  •  ・コンソーシアムに参加している各組織の実績のご紹介(「実績情報」)
  •  ・初心者~中級者のエンジニア向けの3D点群技術セミナー
  •  ・3D点群処理に詳しい方をお招きしての講演会(および懇親会を通しての企業間交流)
  •  ・3D点群処理に関するコンサルティング
日本の点群データの活用の全体レベルをひき上げていきたいというモチベーションのもとで、まずはこうした活動から始めていきたいと考えています。

安価なデプスセンサーでは「Kinect for Windows SDK等で取得できる人物の情報(リアルタイムの姿勢や顔の特徴点)」だけではなくて、物体や部屋の環境や建物をデプスセンサーで3D撮影できているので、これらをコンピュータビジョン的に解析したり、それを3Dグラフィックス的に可視化で加工したりAR的な表示もできます。しかし、これまではモーションコントローラーとしての側面にしかあまり焦点が当たっていない面がありました。
例えば、バーチャル着せ替えミラーや、倉庫の在庫管理、見守りロボットなど、デプスセンサーで実現できる技術的に深いアプリケーションは非常にたくさんあります(※次回(2)で、どういった例が考えつくかについて整理して、研究レベルのモノも含めて実例を多く紹介します)。しかし、点群処理に詳しくなかった会社が、いざ「点群そのものについて深く処理をしたい」という場合に、なかなか相談する先がなかったと思います。
そうした現状から、我々は業界全体の底上げが最終的に我々の利益にもなっていずれ返ってくるというスタンスのもと、冒頭で挙げた目的と活動方針で本コンソーシアムを展開していくことにしました。

とりわけ点群処理の技術面については、私がその活用にも詳しい「Point Cloud Library」について、本コンソーシアムでは焦点を当てて行く予定です。
OpeCVの姉妹ライブラリであるPoint Cloud Libraryは、(OpenCVが画像を対象とした場合同じ役割を担っているように)3D点群のコンピュータビジョン的な処理の活用を便利にしてくれる大規模ライブラリです。また次回の(2)で、非常に幅の広いデプスセンサーの活用先についてまとめる予定ですが、今後のデプスセンサーのモバイルへの進出(GoogleのTangoやiPadのStructure Sensor)に伴いARやWeb可視化などの需要も広くなっていくという我々の予測から、「3Dデータの可視化」技術についても焦点を当てて行く予定です。

私たちもまだまだ半人前で小さなチームですので今後成長していく必要はありますが、日本の点群データの活用の全体レベルをひき上げていきたいという我々の意志に賛同して頂けるようであれば、我々が提供する環境や情報を大いに活用していただければ幸いです。
以降、これまでの我々の経緯を紹介して、なぜ、こういったコンソーシアムを立ち上げることになったのかについて述べていきます。その経緯を通して、今述べた目的と活動方針の狙いがご理解いただけると思います。


これまでの経緯

本コンソーシアムは、共に東京にオフィスを構えるマグネットインダストリーエス計画の2社が、技術的な面での補佐役である私を仲間に加えた構成で、この2014年4月に設立しました。元々仕事上の関係で仲の良かった2社ですが、2社はKinectの登場とPoint Cloud Libaray(PCL)の存在に注目していました。RGB-Dデプスセンサーを活用した独自のビジネスを創っていきたいと考えた彼らは、インターネット経由でデプスセンサーやPCLに詳しい私を発掘(?)して仲間に加えたところから、このコンソーシアム設立に至るまでの話が始まりました。
私と出会って以降、エス計画は多少OpenNI系のデプスセンサーの開発の仕事は行っていたものの、2社とも3Dコンピュータビジョンに強いエンジニアを自前で揃えられるほどの会社ではありません。そこで、まずは準備として私が、PCLやコンピュータビジョンで実現できることを彼らに伝授していきました。現在では2社ともアイデアを自力でつくれるだけの3次元点群処理における豊富な知識を持つところまでは来てはおります。

こうして我々のチームの2社も、デプスセンサーや点群処理を活用したビジネスアイデアを少しずつ独自に出せるようにはなってきたのですが、そのアイデアを実行するためのエンジニアを揃えられていません(2社とも小さな会社です)。そもそも現状の日本では「3Dポイントクラウドの処理に強い人材」はまだまだ散在している程度で、そこに秀でたエンジニアや経営者はそう簡単には見つからない、というのが我々の理解している現状です。大手企業ならさておき、我々のような中小企業ではすぐによい人材を見つけることも確保することも難しいのが現状です。
私もまだ半人前ではあるものの、ご縁もあってPCLの活用についての技術セミナーの講師を担当させて頂く機会が増えてきているのですが、そこに参加されていた中規模〜大会社の技術部長レベルの皆様でも、現時点では「PCLの導入を検討している」という方がほとんどで、点群の処理に強いエンジニアはまだまだ数が少ないというのが日本の現状だと思います。ましてや、マネジメントレベルの人間で点群の活用に明るい方は少ないと思います。


創りたいのは「賑わい」と「つながり」

このような経緯・背景から、前半でも述べたとおり、我々は「3D点群処理を通して、皆がお互いを高めて行けるオープンな場をつくりたい」という発想になり、本コンソーシアムを立ち上げました。みんなで集まって「賑わい」が作ることができれば、そのテーマに関連する産業分野は活性化していくはずです。

当然我々は現状では小さなチームですので、3D点群処理に関連する話を今後どのくらいまで盛り上げていくことができるかは大きなチャレンジではあります。大企業の方も、中小企業の方も、大学の方でも、フリーランスのエンジニアの方でも、「(実セカイの)3D点群」や「(安価な)デプスセンサーの応用」をキーワードに集まって頂く「」を創ることを狙っております。(※ 当然、安価でないデプスセンサーを使ってらっしゃる点群処理の方も是非お集まり頂きたいです)

我々以外でもKinectなどのデプスセンサーを活用したビジネスを展開されている会社はありますが、我々のチームの強さは「(Point Cloud Librayを使いこなせるレベルで)点群そのものの処理に強い」というところにあります。以前から私が個人的に思っていたのは「Kinectでは色付きで3D点群が計測できているのに、Kinectの姿勢推定データしか活用できていない人が多く非常に勿体ない」という視点です。一方で、私個人としても、人間を対象とした認識につよい研究室に所属していますので、Kinect SDK等で取得できる人物のボーン情報や顔特徴点の追跡情報を用いた応用にも当然ながら明るいです。もちろん、高度なことまでしなくとも、安価なデプスセンサーから対象物体や対象環境の綺麗で閉じた全周囲的な点群をまず撮影するという計測的なところでも、まだ詳しい人は多くは居ないと思います(※ 高価な計測器を用いるものであれば、当然そういった品質の高い点群を計測できる会社は既に数多く存在することにはご注意を)。
「点群まで使いこなさないと勿体ない」と感じるのは、もちろん私が普段はコンピュータビジョンの研究者コミュニティに居ることもあります。私の周りには(本当は難易度が高いのに)いとも簡単にそういった3D点群処理まで活用して面白い事を実現している方も多いわけです。ただ、そういった少しハイレベルなエンジニアも当然日本にも「存在して居る」わけで、3D点群処理が新しい技術であると性質上、まだ皆様が接点が得られる場所が少なかっただけだと思います。

大企業の場合はそういった人材をR&D部門に雇えていれば事足りますが、中小企業の場合にはなかなかそうはいきませんし、そういった人材を見つけるのがまず難しいと思います。当然、そうした価値の高い人材とつながるためにはそのスキルに見合った報酬がない力を借りることはできません。ただ、人は雇えなくとも、皆様自身が出来る範囲で点群の活用に勉強していくことは可能なはずです。これまでは点群処理についても学ぶ環境が大学くらいにしかなかったのを、本コンソーシアムで少しずつ変えていければ嬉しいとも考えております。

また、「点群」を目的としたコンソーシアムに皆様が参加することにより、似たような目的の仲間で高め合うことによる「モチベーション向上」の効果も狙っております。
3D点群の活用は、まだまだ新しい技術分野でありますので、周りに同じようなモチベーションの人が居る中で仕事を続けるのと、そうした人たちとの会話がないまま孤立して仕事を続けるのでは、前者の方が大きく仕事の質が上がってくるのは明らかだと思います。私たちはそうした「人と人のつながり」を重要視した、コンソーシアムの運営を考えていきたいと思っております

当然ながら我々のチーム自体でも、点群を活用した新規のビジネスを立ち上げて行く予定です。今後、披露していく我々の新しいアイデアに共感していただけた方は、我々のチームにも是非参加を検討していただければ幸いです(企業レベルのでコラボレートも当然ながら歓迎いたします)。


まとめ

以上、今回は、本コンソーシアムの一番最初の紹介として、私の方から「目的と活動方針」と、それらの目的・活動指針に至った「背景」について述べさせていただきました。
我々は、今後たくさんの色々なジャンルの業界の皆様とお会いしていくなかで、お互いに高めていけるようになるミライを楽しみにしております。また、皆様の会社がお互いにコラボレートしていくことで、これまでの世の中にはなかったような製品やサービスを構築していくきっかけを作り出す事ができる「場」を形成していきたいです。(私は「皆様の点群処理を通しての発展」をお手伝いできる人となれるように頑張っていきます)
点群の活用に興味がある皆様は、ぜひ本コンソーシアムを応援・参加していただければ幸いです。
次回の私の記事では (2)「デプスセンサーやPoint Cloud処理の近未来」をテーマとして、今回の記事ではまだ論じることができていなかった「どういった分野の方々が点群やデプスセンサーの活用に関わってくるか」について書かせて頂く予定です。

林昌希

2014年5月12日

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